病原性大腸菌O-157被害、全国で約1500人に

(1996年6月24日 読売新聞ニュース速報)

5月25日、岡山県邑久町で幼稚園や小学校の子供たちが下痢や腹痛を訴えたことに端を発したO-157の集団感染は岐阜市と広島県東上町でも学校給食が原因と疑われる食中毒が発生しその後瞬く間に全国に広がった。6月24日までの厚生省のまとめによると、被害者は15都府県約1500人、死者3人に上っている。感染源は特定されていない。
病原性大腸菌の中でもO-157は、毒性が強く、そのベロ毒素は、ボツリヌス菌に匹敵する猛毒とされる。激しい腹痛と下痢で始まり、重症になると貧血やけいれんなどを起こす。大人の場合、発症後5〜8日で自然に治るケースがほとんど。だが、乳幼児や病弱なお年寄りは重症に陥ることがある。
O-157は牛の腸内にもおり、国内の全国食肉衛生検査所協議会の全国調査によると、食肉牛4914頭のうち5頭からO-157が検出された。都立衛生研究所の甲斐明美主任研究員は、「牛を解体する時に、菌が肉の表面に付着している場合があり、生肉には気をつけた方がいい」と指摘している。
今回、感染源が特定できないのは、潜伏期間は4日〜8日と長いためだ。事態を重視した同省は、現在、食中毒の原因食品の流通経路と各地で検出されたO-157の検体のDNA解析の両面から調査を進めている。しかし、流通経路は広域にわたっているうえ、生産者や加工所に、感染者が食べたのと同じ食品が残っているとは限らない。DNA解析でも、菌が同一かどうかが判定できるだけで、調査は難航しそうだ。
米国で1992年から1993年にかけて感染者が700人に上るO-157の大規模感染が発生した。調査の結果、レストランチェーンのハンバーガーから菌が検出された。このケースでも加熱が不十分だったことが明らかになっており、家庭では、食中毒の加熱や手洗いの徹底などの対策で、かなりO-157による感染は防げるとみられる。
今年、集団感染が多発していることについて、大阪大微生物病研究所の山本耕一郎助教授(細菌学)は、「食品の冷凍保存が増え、食品の流通が広域化し、食品が菌で汚染されやすい状況になっているのが一因ではないか」と話している。

O-Ring Test オーリングテストを適切に用いることによって、食中毒を未然に防ぐことができます。自分が食べる予定の食品を指さして、自分の2本の指で作ったオーリングを引っ張ってもらい、力が弱くなっていないかをチェックます。力が抜けてオーリングが開く場合は、自分にとって有害な食品であることが疑われますので、その食品は食べない方が良いと思われます。
この簡便な検査で、食中毒が予防できます。
もちろんテストに習熟し、正確なテストができた上でのことですが、テストの結果の解釈には十分留意する必要があります。
かりに指の力が抜けても、すぐに食品に有害物質が混入していると判断してはいけません。その人が食事をした後の場合は、胃腸の中に同じ食品があるため共鳴現象によって力が抜けてしまうことがあるからです。また、有害性の理由として、その人の病気や体調によるものも考えられます。例えば胃潰瘍の人は刺激物でオーリングの力が抜けてるでしょうし、糖尿病の人はカロリーが多いもので力が抜けてしまうでしょう。食品自体に問題があるかどうかは複数の健康な人でテストをすることが望まれます。
また逆に、指の力が抜けなかったからといって、その食品が汚染されていないとはいえません。その人の免疫が強ければ、少量の菌が混入していてもオーリングが開かないことがあるからです。食事をする本人以外で検査する場合、特に乳幼児など免疫が弱い人が食べる場合はそのことに十分注意して下さい。
オーリングテストの共鳴現象を使った存在診断を用いると、食品の細菌汚染などをより具体的に調べることができます。実際の食中毒発生例で、保健所の方と協力して、患者の糞便や患者の食べた食品を調べたことがあります。オーリングテストで迅速に感染源や菌種を推定し、早急に被害の拡大を防ぐことができました。オーリングテストの結果は、何日も後から帰ってきた実際の細菌培養の結果とほぼ一致しておりました。
オーリングテストで0-157の存在の推定するには、共鳴現象のコントロール物質として0-157の細菌をプレパラートに固定した標本を用いる方法と、O-157免疫血清を用いる方法とがあります。筆者が調べたところでは、前者はO-157に著明な筋力低下をおこしますが、O-157以外の大腸菌にも交差共鳴反応をおこし、少し筋力低下現象が認められました。後者は他の大腸菌には反応せず、O-157の細菌に特異的に共鳴反応を示しました。後者の場合は感染の危険がなく、標本の作成や使用段階で安全に用いることができ、またO-157にねらいを定めて調べるのに適切だと思われます。筆者は、デンカ正研株式会社(東京都中央区日本橋兜町12番1号)の病原大腸菌免疫血清「正研」(体外診断用医薬品)を一滴スライドガラスに滴下し、カバーガラスで封入したものを作成して研究用に用いています。
オーリングテストで体外の物質と手に持ったものとの間の共鳴現象を調べることは、ノイズの混入などにより判定を誤る可能性が高く、精度を高めるのに熟練を要しますが、適切に調べることができるならば、簡便かつ迅速な食品の検疫のスクリーニングとして、威力を発揮するものと思います。





1996年07月07日 掲載
2008年06月02日 更新
山本重明